アルファー(国分和子)と祓所神札は毎日のように一緒に帰るくらいに仲が良かった。土日には図書館で勉強したり(来年受験だから)、最先端のファッションを眺めに行ったりしていた。
ある日の帰り道、神札が住まうコンフォート中津(アパート)の前で珍妙な事を言い放った。
「もしもさ、夢の中に迷い込んだら・・・そんな事ないと思うけどさ。」
「絶対に、目を覚まして欲しい。わたしの、ちょっとしたわがままだけれど。」
その言葉を聞いて、アルファーは「みっちゃん疲れているんだなぁ」程度の認識しか抱かなかった。
その認識が間違いだった。次の日(金曜日)、神札は学校に来なかった。今日は調子が悪くなったんだろうな、とアルファーは必死に自身をなだめようとした。一日中、落ち着かなかった。
重大な事態であることに気づいたのは、翌朝のテレビを見た時であった。
今日で神札が起きなくなって6ヶ月が経った。世界中の鳥が悲しみ、世界中のザトウクジラが悲しみの潮を吹いたが、地球はどうでもいいかのように、自転していた。
アルファーは打ちひしがれていた。今の医学では、神札を起こせない。途方もないような時間がかかるが、若い神札でも流石に死んでしまう。神札の誕生日だって、満足に祝えなかった。
神札は原因未明の植物人間状態、回復の兆しも、意識の断片さえない状態。
そしてアルファーは、もはや恒例に近いマスコミのインタビューを終えて、眠りに就こうとしていた・・・。